理事長挨拶

 2025年(令和7年)7月より理事長を拝命いたしました、三重大学大学院医学系研究科看護学専攻の松岡でございます。私は、1990年代から看護師として、小児がんのこどもとその家族の看護にたずさわってまいりました。大学院修了後、千葉県こども病院で勤務していた2003年には、本学会の前身である「小児がん看護研究会」の立ち上げに関わらせていただきました。
その後、臨床を離れ教育・研究の場に軸足を移す中で、しばらく本学会から距離を置いていた時期もございました。そのため、今回、理事長の大任をお引き受けしてよいかものか、迷いもございました。しかし、今期は評議員による選挙で理事が選出される体制となった2期目であり、理事としてお選びいただいたことに、会員、そして評議員のみなさまの期待を感じました。加えて、新旧理事のみなさまの温かいお声がけに背中を押され、小児がんのこどもと家族、そして小児がん看護にたずさわる仲間のために、微力なら尽力したいと考え、お引き受けする決意をいたしました。近年、小児がんの診断を受けたこどもの長期生存が可能になってきました。これは、医学の進歩、すなわち研究の成果が、実際の臨床の現場に届いているからに他なりません。一方、こどもたちは、治療による副作用や晩期合併症など身体的な苦痛だけでなく、不安や孤独と行った心理・社会的なつらさとも向き合っています。そんな毎日の中でも、「こどもたちが少しでも安心して、こどもらしく過ごし、成長していけるように。そして、小児がんを経験したその先も、自分らしい人生を歩んでいけるように。」その思いを胸に、質の高い看護を届けることが、私たち小児がん看護にたずさわる者の大きな役割と感じています。
そのためには、現場で培われた経験に加え、研究による知見をつないでいくことが欠かせません。まさに、学術団体である学会の果たす役割は今、とても大きくなっていると実感しております。
現在、日本小児がん看護学会は約800名の会員のみなさまにご参加いただいております。また、日本小児血液・がん学会と合同で開催される学術集会には、毎年400名を超える方が参加され、小児がん看護への関心の高さと広がりを感じています。学会運営は、役員だけでなく、会員のみなさま1人ひとりの“こえ”によって支えられているものです。例えば、去年の京都大会では、委員会との合同企画として、「日々のもやもや、何とかしたい!看護師の声、出し合いませんか。~リサーチカフェにおこしやす~」を開催しました。そこで寄せられた率直な“こえ”に、私を含め、学会役員一同が多くの気づきを得ることができました。今後もこのような機会をもつとともに、みなさんの“こえ”をもとに、学会として具体的な取り組みを検討していきたいと考えています。
これからの2年間、理事長として、みなさまの思いや実践をつなぎ、小児がんのこどもとその家族、そして、そのケアに携わる看護職にとって、よりあたたかく力強い学会となるよう尽力してまいります。今後とも、みなさまの温かいご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

2025年8月

        日本小児がん看護学会
理事長 松岡 真里